依存(いぞん? それとも いそん?)
2014年4月に変更されたNHKの放送用語、今回のことばは「依存」。これまでは「いそん」を優先してきましたが、「いぞん」を優先に変更しました。「依存」は「何かに頼って存在する」という意味です。「存在」の意味を表す場合、伝統的には「そん」と読む傾向があり、「共存」「残存」「併存」なども「そん」と読んでいました。一方「異存がある」など「考え」の意味の場合は「ぞん」と濁って読む傾向がありました。「存じます」「所存」などもそうですね。ところが最近はこうした読み分けがなくなってきました。平成22年に放送文化研究所が「薬物に〝依存〟する」の読み方を調査したところ、「いそん」は6%、「いぞん」は92%という結果でした。こうした変化は、複合語の後ろの語の頭の音が濁る「連濁」という現象と考えられています。他の例では「芋焼酎」や「完全試合」の読み方。「芋しょうちゅう」、「完全しあい」が「芋じょうちゅう」、「完全じあい」に変わってきています。一般に、そのことばが良く使われて、口になじむほど連濁が進む傾向があります。「依存」も、「依存症」ということばが広く使われるようになってきたので「いぞん」が増えたのかもしれません。こうしたことから「いぞん」を優先にして、「いそん」を2番に変更しました。ただし「既存」は扱いが違います。従来は、「きそん」と読み、「きぞん」の読みは認めていませんでしたが、今回、「きぞん」も認めることにしました。この場合は、「きそん」という読み方をしている人もまだ多いという調査結果があり、辞書でもまだ「きそん」を中心に掲載しているため、「きぞん」を優先にはしませんでした。